和漢のいろは Wakan no iroha
生薬の頂点に君臨する鹿
皆様、こんにちは。Dr.Tei Kenです。今日は「鹿茸」(ろくじょう)についてお話します。
生薬の三宝“鹿茸”
高級生薬の代表「鹿茸」は生薬の三つの宝の一つで、毎年生え変わる鹿の幼い角のことです。鹿茸をご存じの方は「滋養強壮・精力剤」のイメージかと。間違いではありませんが、数千種類にも及ぶ生薬の頂点に君臨する鹿茸。他にも様々な効能があり、広く応用され、人類の健康に役立っています。≪中薬大辞典※≫で「元陽を壮(さか)”んにする、気血を補う、精髄を強める」と書かれています。「元陽」「気血」「精髄」は健康に欠かせない要素です。
滋養強壮だけではない鹿茸
鹿茸が年配者、女性、児童にも良いことはあまり知られていません。本草綱目※(ほんぞうこうもく)では、精を生じ髄を補う、血を養い陽を益す、筋骨を強め健やかにする。一切の虚損、耳聾(じろう)(耳が遠い)、盲目(目が見えにくい)、めまい、虚痢(下痢)を治す。と記載され、老人の消化機能減退≪本草切要※≫や、腰・背中の痛み≪名医別録※≫にも効果があります。近年の研究で認知症や、抗ガンに関する報告もあります。
女性と鹿茸
一方、女性には、「崩中漏血(不正出血)を主(つかさど)るには、炙って粉末にし、空腹時に温酒で服用する。また赤白帯下(おりもの)には散剤として用いる薬性論※」とあり、不妊症の配合等にもよく使われます。小児には発育不良や夜尿症の配合に用いられます。
鹿茸は医薬品 使い方が大切
生薬は「薬」のため注意が必要です。名医曰く、「鹿茸は精を補い、髄を填める効能に甚だ偉れるが、(症の無い)服食には不適。往々にして吐血、鼻血、尿血、目赤、頭暈、意識不明などの症を発生させる。<中略>私は鹿茸を用いるべき症に出会うごとに1厘からしだいに数分・数銭と増やしていく。すると、必ず妥当な効能を得るが、これはすなわち大虚緩補の義である」。まずは鹿茸を使うべき症を見極め、少量から増やしていくのが必須。医師でないと使いこなせません。
鹿茸の値段は高額で、日本で使われる年間3千キロはすべて輸入品。エゾシカを含む野生のニホンジカは300万頭以上。鹿茸を活用しないのは勿体ない気がします。
※ 中国に古くから伝わる漢方書
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